Instruments  |  焦点面装置

LSTは、より広い視野、より広い波長をカバーすることで、目に見えない宇宙を「3次元イメージング」することを目標に掲げます。これを実現するために、以下のような3つの主要観測装置の搭載が計画されています。

ABOUT LST
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超広帯域分光撮像装置

LSTには、分光撮像装置と呼ばれる観測装置が搭載されます。分光撮像とは、撮像による天体の発見と同時に、検出された天体のスペクトルを取得することで、その天体までの赤方偏移(距離)やガスの物理的状態、化学的組成を明らかにする技法です。この装置は、一酸化炭素分子や炭素・酸素原子などの輝線スペクトルを強く放射する星形成銀河を検出し、宇宙開びゃく後わずか数億年から現在に至るほぼすべての宇宙史にわたってその空間分布を描き出す深宇宙探査(ディーブ・サーベイ)に使われます。

 

LSTでは、ALMAの1,000倍の視野(画素数)とALMAの100倍の分光帯域幅を同時に達成し、ALMAの10万倍もの広大な宇宙の体積を瞬時に分光撮像する目標を掲げています。このきわめて野心的な目標を実現する技術として最有力なのが、集積型超伝導分光計 (integrated superconducting spectrometer, ISS) と呼ばれる新しい技術です。集積型超伝導分光計は、量子コンピューターの量子ビット読み出しにも用いられる超伝導共振器技術を応用した運動学的インダクタンス検出器と超伝導フィルターバンクを採用し、数百ギガヘルツにわたる分光と数千ピクセル以上の多画素化を可能にするスケーラブルな技術です。LSTコンソーシアムでは、世界第1号となる集積型超伝導分光計 DESHIMA (遠藤ら2019) の実証に成功し、そのスケールアップした装置 KATANA (唐津ら)、さらには多天体分光器コンセプトMOSAIC (Baselmans ら) を計画しています。

広視野多色カメラ

もう一つの重要な装置は、広視野のマルチカラー連続体カメラまたはマルチクロイックカメラで、150~350GHzを3バンドでカバーします(ベースラインプラン)。また、90〜420GHzを最大6バンドでカバーすることも可能です(目標)。

大型のマルチカラーボロメーターアレイはすでに実用化されており(例:SCUBA2; Holland et al.~2013, Holland et al.2013)、時間領域多重化されたトランジションエッジセンサー(TES)が採用されています。現在では、南極望遠鏡での最近の科学的成果(Carlstrom et al.2011)に見られるように、周波数領域多重化を用いたTESアレイが広く実装されています。マルチクロイックTES技術は、PolarbearやLiteBIRDなどの宇宙マイクロ波背景(CMB)実験のために集中的に研究開発されてきた(例えば、Suzuki et al.2012)。

ASTEの10m望遠鏡では、2色のTESカメラが開発され(例えば、Takekoshi et al.2012, Oshima et al.2013, Hirota et al.2013)、2014年に270GHzと350GHzでコミッショニングと初期科学検証が成功した(N_pix = 169と271)。さらに新しい校正装置を用いたコミッショニングランを実施した(2016年4月~7月)。また、350GHzと670GHzで合計881画素となるアップグレード計画も検討されています。

MKID技術は、IRAM 30m望遠鏡のNIKA2で実証されたように、多色のワイルドフィールド撮像装置にも適してきている(Calvo et al.2016)。また、野辺山45m望遠鏡用の600ピクセルMKIDカメラも開発中である(Sekimoto et al.2014)。ASTE(およびLMTやIRAMなどの他の望遠鏡)でTESとMKIDの両方の技術を検証することは、提案されている次世代サブミリ波望遠鏡に必要な広視野カメラの開発に向けた非常に重要なステップの1つです。

ヘテロダイン受信機

冷たく静かに横たわる暗黒星雲が含む分子ガスのわずかな運動や化学組成、詳細な物理状態を明らかにするには、わずかな周波数の違いを見分けることが可能な高いスペクトル分解能の分光観測装置が必要です。また、ALMAと組み合わせて高い空間分解能を達成するためには、位相検出ができる受信技術が必須です。これは、 DESHIMA のような直接光子検出型の観測装置では不可能です。

 

こうした科学的要求に答える事実上唯一の技術が、ヘテロダイン受信代表されるコヒーレント受信技術です。LSTは、複数のヘテロダイン受信機を焦点面に並べたヘテロダイン受信機アレイを備え、天の川銀河や近傍の銀河の分子雲の高分散分光撮像を可能にします。また、銀河系内の原始星コアや太陽系内惑星の多種多様な化学組成を探る分子スペクトル輝線探査や、超高赤方偏移の爆発現象(ガンマ線バースト)の分子・原子スペクトル吸収線探査など、さまざまな研究に利用されます。

野辺山45m望遠鏡、ASTE望遠鏡、そしてALMAのヘテロダイン受信機開発で培われてきたノウハウは、LSTのヘテロダイン装置の開発にも活かされます。ヘテロダイン受信機の帯域幅は、中間周波数 (IF) 帯域によって20 GHz程度に制限されています。その一方で、無線周波数(RF)ドメインでの多重化を採用し帯域を劇的に広げる斬新なアイデアが提案されています (小嶋ら2015)。