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ABOUT LST

Telescope  |  望遠鏡

ミリ波・サブミリ波帯において、広い視野・広い波長域を一挙に観測可能な 50 m 級の大口径望遠鏡を実現します。

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Telescope Requirement

1. 口径と鏡面精度

サブミリ波望遠鏡の大口径化は、宇宙論的な深宇宙探査への鍵となります (Science を参照)。大口径化は、広い集光面積 (すなわち高感度) と高い解像度を達成するためになくてはならない性能です。とくに、解像度が低いときに天体画像がにじんでしまうことによって生じる「コンフュージョン・ノイズ」を低減することで、より暗い天体の検出を可能にするとともに、天体の正確な位置を特定して多波長対応天体を確実に同定することが可能になります。50m級のサブミリ波単一開口望遠鏡が実現すれば、現在チリで運用中のサブミリ波単一開口望遠鏡(ASTE 10m、APEX 12mなど)と比べて、感度を約20倍に、解像度を約5倍に、コンフュージョン・ノイズを約1/10に向上させることができます。

また、高い集光性能(開口能率)を実現するためには、観測波長の1/16以下の鏡面精度 (r.m.s.) が必要です。ここでは、420GHz(710ミクロン)をフルアパーチャでの最高観測周波数としているため、鏡面精度は45ミクロン未満であることが求められます。サブミリ波の運用条件でこの精度を達成するには、実時間で鏡面を補正するアクティブな鏡面制御が不可欠です。なお、現在のLSTの要件にはアストロドームは含まれていません。

2. 視野

LSTは、0.5平方度(最大1平方度)という広い視野によって、超広域 (1000平方度)の深宇宙探査や爆発的現象もとらえる高い時間分解能の撮像探査を実現します。この視野のなかに、大型カメラ、分光撮像装置、ヘテロダイン受信機アレイなどの各種焦点面装置を配します。焦点面装置を設置するキャビンの内部には、これらの装置や常温光学系のための十分なスペースが設けられます。

3. 観測周波数

LSTは、地上から観測可能なミリ波・サブミリ波のほぼすべて、およそ70〜950 GHzにわたる広い観測周波数をカバーします。この周波数帯はALMAとほぼ同じです。これにより、ALMAとのシナジーも最大限発揮することが可能になります。

 

ただし、690 GHz (450ミクロン) や850 GHz (350ミクロン) といったサブミリ波帯の観測は、世界屈指のアタカマのサイトであっても容易ではありません。というのも、高い周波数では、風や気温変化、大気中の水蒸気などの環境条件が観測に悪影響を及ぼすからです。現在の計画では、主鏡のうち中央部分の約30 mで高い鏡面精度 (25ミクロンr.m.s.) を達成する望遠鏡デザインとし、高周波数帯での観測にはこの30m部分を用いて観測を実施します。

4. 指向精度

解像度が高く、大きな構造をもつLSTにとって、高い指向精度を達成することはチャレンジングな課題です。私たちがLSTに要求する望遠鏡の指向性能は、0.7秒角以下です。これは420 GHz(50m開口、ビームの半値幅~4秒角)と690GHz(30m開口、同じく~4秒角)の両方で、ビーム半値幅の1/6程度に相当します。また、指向誤差による感度低下も10%以下に抑えられます。

Telescope Desing Concept

1. 能動補償光学と分割鏡

LSTのチャレンジングな性能を実現するうえで最も重要かつ基本的な技術は、電波天文学では世界初となる波面センサによる鏡面計測とアクティブな鏡面制御をそなえた能動補償光学システムです。重力や熱・風圧による変形を正確に計測・補正し、パネルごとに高い面精度を実現します。主鏡面は、2m程度の大きさの分割鏡およそ500枚からなり、各パネルにはアクチュエーターによる鏡面調整機構が備わります。

2. Ritchey-Chretien 光学系

広い視野 (直径0.5~1度) が要求される LST の主鏡-副鏡光学系では、主鏡・副鏡ともに双曲面からなるRichy-Chretien方式を採用しています。一方、より多くの観測装置の搭載に柔軟に対応するために、複数の観測装置を同時に設置・運用するためのナスミス・キャビンを備えています。

3. 概念設計案

以上のLSTの概念設計案のもと、アンテナメーカーの1社から望遠鏡デザイン案が提供されました。この設計案では、LSTに求められる主要な要件(広視野光学系や大型受信機キャビンなど)が実現されています。現在のところ鏡面精度や指向精度などの定量的な検討は設計案に取り込まれておらず、今後の重要な検討項目となっています。

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