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  • 執筆者の写真Akio Taniguchi

第17回LSTセミナーのご案内

 
「サブミリ波望遠鏡を用いた太陽系科学の展望:火星・金星の大気循環および大気化学の制約」

佐川 英夫さん(京都産業大学)


「地球型惑星」として括られる金星, 地球, 火星ではあるが, その大気表層環境は互いに大きく異なっている. 大気の量ひとつをとっても, 地表面気圧が90気圧に達する金星に対し, 火星は0.006気圧にしか満たない. いずれの惑星も大気循環の駆動エネルギー源は太陽からの日射であるが, 太陽からの距離, 惑星 (重力) の大きさ, 自転速度などの差や, 太陽放射を受け取る大気中の領域の違いから, 各惑星で生じている気象現象にも顕著な違いが見られる. 中には, 金星大気のスーパーローテーションや火星大気の全球ダストストームなど, 地球の気象からは想像しがたい現象も存在する. こうした金星・火星の大気表層環境を詳細に理解することは, 太陽系外の惑星系における「地球型惑星」の表層環境を考える上でも有用である. 金星・火星大気の観測的研究においては, 惑星を周回する探査機や惑星大気に投入されるプローブ (火星の場合は着陸機も含む) による詳細探査だけでなく, 可視光から電波領域までの様々な波長を駆使した地上望遠鏡による観測も重要な研究手段となってきた. ミリ波・サブミリ波帯では, 火星・金星大気中のCO分子のJ = (1-0) 吸収線が1970年代に検出されて以来, 大口径単一鏡や干渉計を用いた観測が継続的に行われている. ミリ波・サブミリ波帯観測の大きな特徴として, ヘテロダイン受信機の利用による非常に高い周波数分解能の実現が挙げられる. 惑星大気中の分子吸収線は, 他の大気分子との衝突により, 気圧に依存した線幅を持ち, また, 分子の運動による周波数のドップラーシフトを内包している. ヘテロダイン受信機の非常に高い周波数分解能を用いることでこれらの情報を抽出でき, 前者からは惑星大気中の異なる気圧, つまり異なる高度における大気物理量を, そして後者からは大気循環の強度を推定することができる. この特徴を活かして, 例えば, 金星上層大気の高度80 - 110 kmにかけての気温鉛直分布導出や, 火星大気が全球ダストストーム時の大気循環の様子を探ることが行われている. 本セミナーでは, 近年のミリ波・サブミリ波帯を用いた火星・金星大気研究の成果をレビューし, また, 次世代の大型単一電波望遠鏡に対する期待についても言及する.

 

LSTセミナーとは?

  • 2021年12月から, 毎月1回の頻度でオンライン・セミナーを開催することにいたしました. LSTセミナーは, 将来の大型サブミリ波望遠鏡建設に向けて, サイエンス面でチャレンジしたいことや技術開発面で必要な研究を考える機会としたく思います.

  • 講演時間と質疑応答の目安は, それぞれ60分および30分です. また, セミナー終了後, 残っていただき, 講演者の方とざっくばらんに意見交換することも可能です.

  • 世話人は, LST Sci. & Tech. Promotion Team (lstpt あっと googlegroups.com) です.

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