日時:2022年2月17日(木)16:30-18:00
「広視野サブミリ波探査で探る巨大銀河・ブラックホールの形成」
但木 謙一さん(国立天文台)
最近の近赤外分光観測によって、z=3−4の宇宙ですでに星形成を終えた巨大銀河がいくつも発見されてきている。興味深いことにこれらの巨大銀河の多くはかつては星形成率が1000 Msun/yr 程度、星形成のタイムスケールが数億年程度の爆発的な星形成史を経てきたことを示唆している。このことはz>5にある爆発的星形成銀河、つまりサブミリ波で明るい銀河がその祖先であることを強く支持している。近い将来、JWSTによって地上からは観測の難しい2-4 μmの分光観測が可能になるため、z=5−6にある巨大銀河が分光同定されるのも時間の問題である。その祖先がやはりz>6にあるサブミリ波銀河であるならば、このような銀河種族の系統的探査が2030年代には重要になると予想される。
またアルマによるサブミリ波観測によって、z>6にあるクエーサーの多くでダストの連続光放射が検出されており、母銀河には大量(1e7-1e9 Msun)のダストが存在していることがわかってきた。しかしながらこれらのクエーサーはそもそも可視・近赤外線での広域探査によって選択されているため、ダストに深く埋もれたクエーサーは逃されている可能性がある。もしそのような天体がz>6に存在しているのだとすれば、それらは可視・近赤外線で暗いサブミリ波銀河として観測されるはずである。
「巨大銀河の形成」と「超巨大ブラックホールの成長」という2つの科学的テーマにおいて、大口径単一鏡によるサブミリ波銀河の広域探査が重要な役割を果たすことになると期待されるが、具体的にどのような機能を持った装置で、どのような観測をしていくのが良いか、また次世代の多波長観測のシナジーについて、ALMAによって得られた知見を元に考えたい。
LSTセミナーとは?
2021年12月から, 毎月1回の頻度でオンライン・セミナーを開催することにいたしました. LSTセミナーは, 将来の大型サブミリ波望遠鏡建設に向けて, サイエンス面でチャレンジしたいことや技術開発面で必要な研究を考える機会としたく思います.
講演時間と質疑応答の目安は, それぞれ60分および30分です. また, セミナー終了後, 残っていただき, 講演者の方とざっくばらんに意見交換することも可能です.
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次回以降の予定
第4回LSTセミナー
日時:2022年4月28日(木)16:30-18:00
講師:谷口 琴美さん(国立天文台)
タイトル:分子の化学組成から探る大質量星形成過程と今後の展望
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